hira/iさんの、「主治医をさがす」についてコメントします。
もやもや病のバイパス術をしたのに2度も出血したとのことで、大変お気の毒です。
私はたくさんのもやもや病患者さんに手術をしてきましたが、幸いそんなことはこれまでありません。
実はもやもや病の患者さんのバイパス手術にもいろいろな方法があります。
特に小児では血管が細いため、直接血管をつなぐのが難しいとされており、筋肉や硬膜を脳に接触させるだけの「間接吻合(ふんごう:けっかんのつながりのこと)」という手術法も行われています。
小児では間接吻合術でも、ある程度自然にバイパスが出来るのです。
しかし大人ではあまり間接吻合が形成されない症例があります。だから直接吻合術を必ず加えないといけない。
一方、小児でも術者に技術があるのならまず直接バイパスを行います。なぜならその場で血流が改善するからです。
私は小児でも成人でも直接吻合術と間接吻合術とを組み合わせて手術しています。
これまでの治療成績は極めて良好で、これが現時点のベストの術法であると考えています。
さて間接吻合術にもいろいろな方法があるのですが、バイパスがちゃんとできる脳外科医ならやはり直接吻合術が基本です。
私は国循とチューリヒ大学でバイパスのトレーニングを積んできて、今やバイパスばかりしている週もあるぐらいで、「バイパスおたく」を自認しています。
だからなのかもしれませんが、これまで「頭をあけたけどつなぐ血管がなかった」なんてことは一度もありません。小児でも必ず2本の血管をつなぐようにしていますし、前大脳動脈というかなり末梢の部分にも直接バイパスを行っています。
本音トークですので正直言うと、「間接吻合術しかできなかった」という場合には、「つなぐ血管がない」のではなく、その術者に「つなぐ技術がない」ことが多いんです。
もやもや病のバイパス術は特別です。
この手術においては、0.5mm-0.6mmという細く壁の薄い血管をつなぐ自信がない場合には、最初から経験と技術のある人に任せるべきだと思います。
そのサイズの血管は必ずあります。太い血管しかつなげないから「いい血管がない」ということになるのです。
もやもや病のバイパス術は緊急手術ではないので、患者さんは他院に紹介されてもまず困りません。
頭をあけて「あー、つなげない」なんてことになったらたまりませんが、残念ながら術前の検査では脳表の血管の太さまで分からないので、実際に起きうることなのです。
治療前に太さが分かるようになればいいんですけどねー。まだ無理なんです。
だから細い血管でもつなげる人だけがもやもや病の術者になる。
私たちはずっとそうしています。
さて、術者としてもやもや病のバイパスをどうしてもやりたいのなら、吻合術の練習を徹底的にすることです。
それでもなかなかもやもや病のバイパスはやりにくい。それは前述のように通常より血管が細くて壁が薄いからです。
ですから、そういう志のある人は、経験のある医師とともに技術を磨く必要があります。
さて、コメントに対する私の結論です。
もやもや病の患者さんは、もやもや病の治療経験が豊富なドクターに診てもらうこと。これが大切です。
血管の手術はしていても「もやもや病のバイパスはあまり…」という人もいるからです。
もちろん、腫瘍の専門家じゃダメですよ。
参考にしてくださいね。
ありがとうございます
mixi内のコミュニティは、なにぶん患者さん主体のコミュなので適切なコメントができませんでした。医療用語を知らない私たちでも、とても理解できるコメントで助かりました。
先生のご了承がいただけたら、この先生のコメントをコミュニティ内で紹介したいのですが…。
かくれ脳梗塞?
先日、またまた偶然に読んでしまったブログに先生の話題が…
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極力、交通費を抑えたら、12回になったそうです。
現状は症状はないが、脳梗塞。
いずれバイパスが必要になった時に備え、先生の患者に…
症状のない脳梗塞でバイパスまで必要になることもある??
脳梗塞というと投薬治療か血管内治療のイメージだったので、少々疑問に…
いずれにしろ、先生を受診したのは賢明です。