脳動脈瘤の診断:CTA

前回はMRIとMRAについて説明しました。
今回はCTA (CT angiography)について説明します。
外来でMRを受け、動脈瘤が見つかった場合、多くは次にこの検査を受けることになります。
CTAは造影剤を点滴しながらCTを受けるだけで脳の血管が立体的に描出される検査法です(上の写真)。
カテーテルを体に入れることなく、極めて低いリスクで脳血管の精密検査ができるのです。
ここで「極めて低いリスク」と言った理由は、造影剤は何十万人に一人の割合で重度のアレルギーを起こすことがあるためです。ですのでアレルギーに関する問診が必要ですし、喘息や造影剤アレルギーのある人は検査を行うかどうか医師と良く相談する必要があります。軽度の造影剤アレルギーや一般のアレルギー歴のある人で検査を希望される場合には、ステロイド(副腎皮質モルモン剤)を注射してから検査を行うこともあります。
さてCTAに話題を戻します。最近はCTの性能が良くなり、この検査だけで治療の適応を決定することすらあります。
上の写真を見てください。カテーテルを入れなくてもここまで鮮明に分かるようになったのです!
しかしこの検査にも弱点はあります。脳動脈瘤の治療を行う場合には、頭の中だけでなく頚部の内頚動脈や椎骨動脈に異常がないかどうかチェックしておく必要があります。しかしこのCTAでは一回の検査では頭の中だけしか検査ができません。頚部の血管をチェックしないで治療を行うのは安全性の面で問題があります。今後さらに機械が改良されると、一回の検査で全身の血管のチェックができるようになる可能性があるそうですが、現状ではまだ無理です。ですので私自身は治療法決定前、あるいは直前に脳血管撮影を行って最終確認をしています。
CTAのもう一つの弱点としては、頭蓋底部、つまり頭の骨に接するような動脈瘤が見逃される可能性があることです。上の写真でも骨が写っていますね。
以上のように弱点はあるものの、CTAはMRAと比べて、より鮮明な情報が得られる良い検査法です。
動脈瘤の大きさ、形、ネックのサイズ、周辺の血管との関係などがはっきりと分かります。これらは動脈瘤の治療法選択に際して重要な情報です。周辺の骨や血管との関係については脳血管撮影より情報量が多いほどです。

MRI, MRA, CTA区別がつくようになりましたか?
次回は脳血管撮影について述べたいと思います。

コメント一覧

  1. MRK より:

    ご報告
    先日、仕事中の電話で、60代のご婦人から「動脈瘤が見つかった」と聞きました。ご婦人は「ネックが広いのでカテーテルはできない」と言われたそうです。私も同じ医師に同じ事を言われましたが、実際はネックも狭く、カテーテルもできました。私はその医師に「MRAだけで十分判るので、CTAの必要はない」とも言われ、外科手術、血管内手術ともに不適応と診断されました。
    いずれにしろ「カテーテルを希望するなら、専門医の意見を聞いた方がいい」とアドバイスし、吉村先生を推薦しました。

    2年前にも、すでに治療済みだった30代のご婦人に「主治医の先生のお名前をぜひ教えてほしい」と頼まれた事がありました。ご婦人のブログ内での事で、ネット上では非公開にする約束で、先生のお名前や相談方法をお教えした事がありました。

    吉村先生は「MRKさんには外科手術も血管内手術もどちらもできる」と仰いました。
    「頼もしい先生だなぁ」と嬉しかったのを覚えています。