
こんにちは!このところ寒い日が続きますね。毎朝、温かい布団から出るのがちょっとした「決闘」のような気分になりませんか?
今日は、冬になると外来でよく聞かれる「冬ってやっぱり脳卒中が多いの?」という疑問について、最新の知見を交えて楽しく、そして専門家としてしっかりとお話ししようと思います。
「先生、冬は血圧が上がってしまうんです」 診察室でそうおっしゃる患者さんはとても多いです。確かに、冬は基本的に血圧が上がります。これは低温にさらされて血管が縮むことで、全身の血管の容積が減少して圧力が上がるためなのです。
特に寒い朝にベッドから出る時、冷え込んだトイレに入った時、お風呂場や脱衣所で急激に体温が下がった時は、血圧が急上昇するため脳や心臓にとって大きな負担となり、そういう時に発作が多いこともよく報道されています。
「冬だから仕方ない」と諦めるのはまだ早いです!実は、日々のちょっとした工夫で、そのリスクをぐんと下げられることが分かってきました。今日は、あなたの血管を守るための情報をお届けします。
【寒いとなぜ脳卒中が増えるのか?】
先に述べたように冬に脳卒中が増える最大の理由は、寒さで血管が「ギュッ」と縮んで、血圧が急上昇するからです。まず注意すべきなのは、血管が破れる「出血性脳卒中」です。
「出血性脳卒中」には脳出血とくも膜下出血があり、これらを起こしやすいのは、以下のような背景がある方々です。
● もともと血圧が高めの方:もともと圧力にさらされて血管が弱くなっているところに、もう一押し血圧が上がることで出血を起こしてしまいます。
● 脳動脈瘤やもやもや病などの出血しやすい病気がある方:脳動脈瘤やもやもや血管などの異常な血管は壁が薄くて弱いため、急な圧力上昇で切れて出血しやすいです。
● 動脈硬化が進んでいる方:全体に血管が硬くなり、古いホースのように割れやすくなっています。
また、意外かもしれませんが、冬は血管が詰まる「脳梗塞」も増えると報告されています。血圧の乱高下によって、血管の壁に溜まった「プラーク(ゴミ)」が剥がれ、それが下流で詰まってしまうからとされています。さらに、この影響は脳だけでなく、心筋梗塞など体全体の血管トラブルにもつながります。
ここで一つ、面白い「言葉の誤解」のお話を。日本でよく聞く「ヒートショック」という言葉、実は海外では通じない和製英語なんです。英語で「Heat Shock」と言うと、実は「熱中症」などの真逆の意味になってしまいます。海外では、寒暖差による体への負荷を「コールドストレス(Cold Stress)」や「サーマルショック(Thermal Shock)」と呼ぶんですよ。
【ではどうするか?私からの提案】
何よりもまず大切なのは、自分の血圧の状態を知る「血圧管理」です。そして、今日からできる、血管をいたわるためのアクションをまとめました。
- 毎日の血圧測定と医師への相談:まずは毎日血圧を測りましょう。起床後1時間以内、排尿後、食事前に落ち着いて測ってください。もし高い数値(135/85以上)が続くようなら、自己判断せず、医師に相談して適切な治療(内服など)を受けることが、最大の防御になります。
- エアコンのタイマー機能活用:布団から出る30分前に部屋が温まるようセットしておきましょう。起床時の急激な血圧上昇(モーニング・サージ)を和らげることができます。
- スリッパを履いて「足元」を守る:冬のフローリングは想像以上に冷たいものです。足の裏が冷たさに触れた瞬間、反射的に血圧が上がります。枕元にスリッパを置き、一歩目から冷やさない工夫をしましょう。
- 水回りの「温度差」をなくす :
- お風呂:入浴前にシャワーを浴槽に向けて出し、湯気で室内を温めましょう。脱衣所のドアを開けて、リビングの暖かい空気を送り込んでおくのも有効です。
- トイレ:廊下との温度差を減らすため、ドアを開けて暖房の風を入れたり、小さなヒーターをおいて「ヒヤッ」とすることをなくしましょう。
【最後に】
今日紹介したような工夫で血圧の急上昇を防げば、脳卒中リスクをグンと下げることができます。これからしばらく続く寒い日を乗り越えていきましょう!
【引用・参考文献】
- Kario K, et al. Morning surge in blood pressure as a predictor of stroke. Circulation. 2003.
- 日本脳卒中学会:脳卒中治療ガイドライン2021.
- 脳卒中データバンク2021(季節性と発症リスクに関する統計