フランスの山奥のスキーリゾート地、ヴァル・ディゼール(Val d’Isère)で開催されている国際学会「ABC-WIN 2026」に参加しています。
この学会は非常に長い歴史を持ち、現在も会場が満杯になるほどの盛況ぶりを見せています。世界中から約500名もの専門家が集まるこの地で、日々刺激的な時間を過ごしています。
今回は、学会の様子と合間のスキーについてレポートします。

独特なスケジュールと学会の熱気
ABC-WINの最大の特徴は、その独特な開催形式にあります。
セッション1:午前8時 〜 午後12時(4時間)
休憩・アクティビティ:午後12時 〜 午後16時
セッション2:午後16時 〜 午後20時(4時間)
1日合計8時間の集中したセッションが行われます。驚くべきはその独特の進行方法で、どの発表に対しても質問が無くなるまで質疑応答が続き、質問がなくなってから次の演題に映ります。時間単位でどんどん進んでいく他の学会とは一線を画します(その分、発表時間は読めず、順番が回ってこなくなる演者もいますが…)。このような独特のスタイルですが、どの時間帯も座席はほぼ満杯で、会場は熱気に包まれています。
そして、12時から4時までの4時間の休憩時間ですが、ここをうまく使うとこの学会がさらに楽しくなります。私たちは午前の部が終わると昼食はサンドイッチなどで短時間で済ませ、スキーを楽しんでいます。オンとオフが明確に分かれた、非常に理にかなった形式だと思います。
世界トップレベルの報告に圧倒される日々
発表のレベルは極めて高く、日本ではまだ見たことのないような治療法や検査法などが次々と紹介されています。その勢いには、ただ圧倒されるばかりです。
特に印象的だったのは以下の点です。
- 脳脊髄液漏出症:先日ボストンで学んできたこの分野についても、複数の最先端な発表がなされていました。脊髄前面に貯留した髄液腔にカテーテルを直接挿入する方法などが報告されました。
- 頭蓋内圧後進症や耳鳴りに対する血管内治療:静脈洞狭窄に対するステント留置術が多数報告されていました。
- 静脈洞血栓症に対するカテーテル再開通治療:これは私自身も経験がありますが、新しいデバイスの使用経験が紹介されていました。
- 髄液ーリンパ瘻の症例報告:これまで論文の中でしか知ることができなかった症例が、実際のケースとして紹介されており、大きな衝撃を受けました。
- 脳血管検査専用の光ファイバー(OCT)の開発と臨床応用:以前に私たちが臨床研究で用いていたOCTが脳血管専用に開発され臨床応用されました。
世界のトップリーダーたちが絶えず挑戦し続ける姿勢や、その先にある計画を目の当たりにし、これ以上ないほどの知的な刺激を受けています。
日本からの参加への想い
これほどハイレベルな学会ですが、残念ながら日本からの参加者は少ないのが現状です。
フランスの山奥という立地条件のため、往復ともに日本から20時間以上かかります。それに加え、昨今の円安による旅費・滞在費の高騰も大きな壁になっているのでしょう。しかし、これほどまでに質の高い知見に触れられる学会に日本人の参加が少ないことは、非常に寂しく感じます。
私は幸運にも参加できましたので、精一杯情報を吸収し、人脈を温め、そして広げて帰りたいと思います。
学会の合間の楽しみ
学会の合間には、一緒に参加している森下・河野先生とともにスキーと美味しい食事を楽しんでいます。長時間の勉強をした後、仲間とレジャーをする時間は格別です。
この貴重な経験を日本の医療現場にも還元できるよう、今後も精一杯取り組みたいと思います。