VIVA09に参加して感じたことを書きます。少し専門的になります。
VIVAでは頚動脈ステント留置術のライブデモンストレーションが数多くありましたが、さすがにこの学会でライブをやるだけあって、Dr. RoubinやDr. Anselは一流術者だなと感じました。二人とも超有名な大御所ですから普段から全例この治療に関わっているかどうかは分かりませんが、少なくとも現在でも治療に多く関わっていることは手の動きのスムーズさからも十分伺えました。
日本でもそうなのですが、やはり経験の多い人はムダがない。手の動きも確かに速いのですが、それよりも判断の早さと、無駄な時間がないことが全体によどみのない治療につながっているのだと思いました。
こういった術者の治療を見ているのは実に気持ちがいい。リズムがいいと言ったらいいのでしょうか。午前中の最後や午後には2番手以降の術者がデモを行いましたが、驚くほどの技量の差でした。やはりもともと磨き上げた技術があって、その後も常に手術に関わり続けることが一流術者たる所以なのだと思い知りました。現場に出続けることでしかえられない感覚的なものは非常に大切で、それによってこそ、治療の改良の発想などにもつながるわけですからね。
今回の学会で自分が得た重要な教訓の一つは、有名になっても病院の会議室にこもることなく、現場に出続けること、その大切さでした。
さてUSにおけるCASの現状と今後の方向性ですが、一言で言えば、デバイスをFDAが多く認めているにもかかわらず、保険の縛りの厳しさから未だにハイリスク症例の、しかも症候性病変しか治療できずに現場がいらだっているということです。10万件もCEAが行われている国で、まだ3600件のCASしか行われていない。血管外科の圧力がかかっているのでしょうか?まあ、それもあるでしょうが、客観的に見ればやはりCASがCEAと同等と言えるのはSAPPHIREが示したCEAハイリスク患者のみですしね(そのうちの症候性病変しか認めていないのは、エビデンスに忠実なアメリカで意外な感じですが…)。
とにかく今後CASの有効性を示す科学的根拠が示されなければ、ことUSにおいてはCASがメインストリームとなる道のりはまだ遠い、という印象を受けました。
「手術という現場」の芸術と希望
吉村先生が今回の学会出張で得られた「教訓」として挙げられている
内容について、心の琴線に触れてくるものが多々ありました。
先生のブログで勉強させていただいている一生徒としての、
門外漢なりのコメントをお許しいただければ幸いです。
「一流術者」の無駄のない動きと正鵠を射る判断力について。
吉村先生のナレーション付き動画――
「頚動脈狭窄症の外科的治療法として最も代表的なCEA」の「実際の手術」の
映像を拝見すると、
先生が記していらっしゃる「アメリカCAS大御所」ドクターの妙技も、
眼前に想い浮かべることができるようです。
僭越な言い方ですが、
「一流術者」による治療の映像は、観る者を感嘆させずにはおきません。
「なんて美しいのでしょう・・・!」
麻酔が効いているとは言え、患者さんにとってはそれどころではありませんし、
術者にとっては緊張に次ぐ緊張の連続でしょう。
しかし、そのような<真剣>の状況において、
術者の素晴らしい技が<美>を醸し出すのではないでしょうか。
「一流術者」の「磨き上げた技術」とは、<芸術>とも称され得るものだと
思われてなりません。
そして、そのような観る者を感動させずにはおかない、
「一流術者」の妙技の根幹をなすものについて。
吉村先生は書いていらっしゃいます。
「現場に出続けることでしかえられない感覚的なものは非常に大切で、
それによってこそ、治療の改良の発想などにもつながる。」
素晴らしい技術は、たんに<型>を修得することによって実現するものではなく、
「手術という現場」で、術者の全人的な関わりによって磨かれてゆくもので
あるということ。
そのような真実を教えていただいているように思います。
吉村先生はさらに書いていらっしゃいます。
「病院の会議室にこもることなく、現場に出続けること、その大切さ」について。
現実には「会議室」だけではなく、「研究室」「講義室」「実験室」「診察室」・・・
あらゆる医療活動の場が、
先生を必要となさっていらっしゃることでしょう。
そのような過酷な働きが要求される医療現場の日常において、「手術という現場」に
関わり続けることが、どんなに難事であることか・・・
でも、先生のような方がいてくださることによって、大勢の患者さんが救われてきたこと、
そして今後も救われることを信じてやみません。
(付記)
個人的なお話で恐縮ですが・・・
今日10月28日は、脳梗塞で亡くなった母の一周忌。
一刻も早く救急車をお願いするなど、倒れて後の適切な対応ができなかったがために、
血管内治療のリミットに間に合わなかったことが、今も悔やまれてなりません。
悪条件下、全力を尽くしてくださった先生方、看護師さんはじめ、
熱意と優しさにあふれるすべての医療従事者の方々に、この場を借りて、
もう一度心よりのお礼を申し上げます。
今も苦しんでいらっしゃるおひとりおひとりの患者さんが、「手術という現場」で
救済され、お元気になられることを心より願って――。