今回のコングレスの会長である小笠原邦昭先生自らが、プレナリーセッション「脳神経外科医の research mind とacademism」でされた講演です。これは若手脳神経外科医に向けたメッセージでした。
「まずは症例報告を書こう!」という切り出しでした。総頚動脈が閉塞した患者さんにバイパスをするのは結構大変なのですが、そういう患者さんの血管撮影を見ていたところ、反対側からの吻合によって浅側頭動脈内に血液の逆流を認めたので、その逆流を使ってごく単純なバイパス手術ができた、という症例報告を書いたということでした。
この話だけでも結構面白いのですが、すごいのはその後に「まれだと思っていた現象だったが、良く観察するとほとんどの患者さんで逆流が認められた」、ということで、「総頚動脈閉塞症の患者さんにはこのバイパス法がほぼ全例でできるかもしれない」、という締めくくりでした。まさに「目からうろこ」の発想です。「ちょっとした目のつけどころが重要」ということの典型です。
私も、いつも「この難しい病気、なんとかならないのかな」とか「この治療法以外にもっといい方法はないのかな」と考えてばかりいます。なかなかいい発想はないものですが、時に「あっ」と思いつくことがあります。問題はこの、「あっ」という発想をきちんとした形にできるかどうかです。
小笠原先生はそれを見事に実践されているというご発表でした。会長自らご講演されたのも納得です。先生のご講演は、私には一生忘れられないほどインパクトがありました。