二刀流の功罪

二刀流の功罪が話題になっていますので付け加えます。

「功」の方は、より良い治療を柔軟に選べる、治療介入のタイミングに遅れがない、複合治療も自分たちで出来るなど、数多くあります。
しかし「罪」もあります。その一つはみなさんのご指摘の通り、両方の治療を極めるために、勉強量と治療経験が2倍必要になることです。
そこで私達が現在、精力的に取り組んでいるのが二刀流を習得するための「トレーニング」です。脳神経外科専門医と脳血管内治療専門医の両方の取得を目標に、症例経験を共有してもらったり、チーム内で様々なトレーニングを行っています。これまで多くの先生達が専門医を取得してきましたし、今後も広く受け入れるつもりでいます。

さて、もう一つ「罪」を挙げると、二刀流医師は多忙になりがちです。紹介する側のドクターも、とりあえず患者さんを紹介しやすいという安心感があるのか、担当患者さんが多くなるのです。医師や患者さんに頼られる結果ですので、ある意味、冥利に尽きることだと私自身は考えていますが、あまりにも一部の医師に患者さんや救急治療が集中するのは問題です。このため脳梗塞の急性期手術など「待ったなし」の治療については、各地域でセンター化をはかり、各病院に赴任している専門医の負担を減らすことが必要です。もちろんセンターには複数の血管内専門医を配置する必要があります。こういった体制を整えることは医師の疲弊を防ぐだけでなく、患者さんが受ける治療の質を向上させることにつながるのです。ですから、このブログでも紹介しているような「Drip, ship」連携システムの構築や、二刀流医師のさらなる育成を行っているというわけです。

全国の二刀流を目指す先生方に、応援をお願いしたいと思います。

コメント一覧

  1. 匿名でお願いします より:

    同意致します
    私はある地方病院の脳神経外科医です.先生のご講演は,学会等で何回も拝聴させて頂いております.吉村先生の提唱する,二刀流脳神経外科医の推進に大いに賛同します.本当は吉村先生のような素晴らしい先生の下で経験を積みたいと思うところで有りますが,諸事情でそれは難しい所です.もう若手とは言えない年齢に達してしまいましたが,少しでも二刀流達人に近づけるように努力し続けたいと思います.

  2. 吉村 より:

    御礼
    みなさん、たくさんのコメントありがとうございました。数の多さに驚いています。
    ただ、特定の病院や先生の名前が含まれているものが大半で、ここでまとめてお返事させて頂きます。

    HKさん(先生)
    二刀流を目指すのはとても頼もしいのですが、その2もご覧下さい。ぜひ脳外科を選択してくださいね。

    研修医1さん
    来年のうちに進路を決められるんですね。ご想像の通り脳外科は忙しいですが、とてもやりがいのある科です。その先生も存じ上げています。頑張ってください。

    Ichiroさん、YUKOさん、みおさん
    ご質問についてですが、特定の病院名や医師名が出されていると、掲載できません。恐縮ながらご了承ください。メールの方からご相談ください。

    Kenさん
    脳外科はやりがいがありますよ。その2も読んで頂き、良い施設を見つけてください。お尋ねのエリアに知り合いはいますが、ここではコメントできません。ご容赦ください。

    Unknownさん(先生)
    先生のおっしゃる通りです。申し訳ありません。文章を変更いたしました。ご指摘に心より御礼申し上げ、今後は改めるようにいたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。

    Kikuさん、MRKさん、かつたさん、ICU男児さん、Kさん
    応援ありがとうございます。私もまだまだ修行の身です。これからもどうぞよろしくお願いします。

    カンペイさん(先生)
    先生のご指摘の通りだと思います。ただし私は未破裂脳動脈瘤に対する血管内治療も有用だと考えています。それぞれの施設がよく考えて適応すればよいのではないでしょうか。その記事の症例について私自身は詳細を知りません。治療を手がける医師として、気を引き締めるきっかけになったと考えております。