脳動脈瘤 その18 外科手術 1. クリッピング術 「骨はどうするのか?」


開頭手術の紹介の続きです。
皮膚を切った後、次に行うのは骨を開けることです。
どうやって硬い頭蓋骨を開けるのでしょうか?

まず、頭蓋骨にドリルで穴を開けます(図1)。
というと、ドリルで脳を傷つけてしまうのではないかと不安になりますよね?
でも、ここで使うドリルは工事現場のものとは違います。
開頭手術専用のドリルで、骨を通り抜けるとクラッチのような原理でドリルの先端が回らなくなり、脳を傷つけない安全システムが備わっているのです。
すごいですね!

さて、骨に何カ所かドリルで穴を開けたら、その穴をつなぐように切ります(図2)。
この器具も途中の棒状の部分だけが回転して骨を切るようになっており、先端は下の膜を傷つけないようになっています。

さて、骨の穴と穴をつないで切ったら骨は簡単に外れます(図3)。

そして、手術が終わったら、薄い板状のチタンプレートというものをネジで止めて骨を固定します(図4)。
なぜこのような形をしているかというと、最初にドリルで開けた穴をふさぎ、そして骨同士を固定することができるようになっているのです。
このプレートは非常に薄いので術後に出っぱりがほとんどありません。
しかも、チタンという金属でできているので、固定後にずれるようなことはありません。また、骨を切る時に出来た溝は、骨の粉や人工骨でふさぎ、そこさえも手術後にへこみが出来ないように配慮します。

このように、頭の骨を開けるという一つの操作にも、周りの構造を傷つけないような様々な工夫が凝らされています。
また、徹底的に美容的な配慮をすることで、術後に傷が分かりにくくなります。
自分の患者さんにも、「どちら側の手術でしたか?」とお尋ねすることがあるほどです。
安全かつ美容的な手術を目指して、開頭手術も日々進歩しています。

コメント一覧

  1. m、m より:

    無題
    外した骨はチタンプレートではめ込み固定するとまた自然に元のようにくっつくのですか。
    頭蓋骨の下どうなっているのか早く次回が楽しみです

  2. 眞由美 より:

    Unknown
    8月にくも膜下出血で手術を致しました。
    その際、未破裂脳動脈瘤が発見され
    開頭手術をし、クリッピング手術も同時に
    行いました。
    幸いにも、大きな後遺症もなく
    リハビリ病院に転院し2カ月を経て退院しました。
    今は自宅で療養しておりますが
    再発の不安で夜が眠れません。
    眠れないのは、手術も関係しているのでしようか。

  3. 吉村 より:

    不眠症
    眞由美様、くも膜下出血を起こしてお元気になられるのは20-30%とされています。本当に良かったですね。
    不眠症との関連はないことが多いのですが、詳細は受診している病院でお尋ねください。また、再発の不安があるということですが、クリッピング術を受け、検査で動脈瘤が治癒しているのであれば、あまり心配されなくて良いと思います。ご経過が良いことをお祈りいたします。

  4. 吉村 より:

    m、mさんへ
    骨はしっかりとくっつきます。
    以前は骨を糸で固定していましたが、ずれてしまうことがありました。最近では絵に描いたようにチタンで固定しますのでずれはありませんし、数ヶ月でしっかりとくっついてしまいます。徐々に脳の中のお話をしていきますのでよろしくお願いします。